斉藤やすひろ議員の本会議(6月13日)代表質問

子育て・教育施策

① 高校授業料の無償化について

【質問】

都議会公明党の推進で、私立高校の授業料は、都の所得制限を都立高校と同じ910万円未満まで緩和した。

しかし、授業料を一旦納付しなければならない仕組みは変わっていない。令和5年からオンライン申請で早まるとはいうものの、最短でも10月からの支給であり、依然として保護者の負担感は解消されていない。

都議会公明党の試算では、所得制限を撤廃した高校授業料の実質無償化に必要な追加予算は430億円である。

都は毎年、事務事業評価により1,000億以上の新たな財源を生み出しているが、令和5年も1,141億円の財源を確保している。この事業評価の取り組みをさらに加速すれば、都立、私立ともに所得制限を撤廃した高校授業料の実質無償化を実現することが可能である。

東京都は2024年度からの開始を見据えた、都立・私立高校の授業料の所得制限を撤廃した実質無償化を実施すべきと考えるが、知事の見解を伺う。

【知事】

高校授業料の無償化についてであるが、家庭の経済状況によって未来を担う子供たちの将来が閉ざされてはならない。

そのため、都は、国の就学支援金に加え、独自の特別奨学金により、年収約910万円未満の世帯に対し、高等学校の授業料を実質無償化している。

授業料の支援については、施策目的と所得制限の考え方などの検討課題がある。

今後とも、誰もが個性と能力に応じて希望する教育を受けられる環境を整えられるよう努めていくとともに、子育て世帯の置かれている状況を注視していく。

② 保育人材対策について

【質問】

都では、保育士確保のために、保育士のキャリアアップに取り組む事業者の支援や保育従事職員の宿舎借り上げ支援を実施してきたが、引き続き、こうした支援を継続、拡充するとともに、保育人材の確保・定着を図るため、職場環境の改善や処遇改善に取り組むべきと考える。見解を求める。

【福祉保健局長】

保育人材対策についてであるが、都は、保育士の処遇改善を図るため、平成27年度からキャリアパスの仕組みを導入する事業者を対象に支援し、平成29年度からは、財務情報の公表や非常勤職員の賃金改善等を行うことを条件に、補助を拡充している。

また、令和5年度から、保育所向けに、社会保険労務士による講座を開講することとしており、業務負担の軽減や働き方の見直しなどについて事例検討を行い、職場環境の改善につなげていく。

保育人材の確保・定着に向け、保育士がやりがいを持って働き続けられるよう、様々な施策に取り組んでいく。

③ 保育士修学資金貸付制度について

【質問】

保育士修学資金貸付制度は、保育士養成施設に在学する方に対し、無利子で修学資金の貸し付けを行う制度だが、所得制限があることや貸付上限が月額50,000円と少ないこと等が課題として挙げられている。

保育人材確保の上で、修学資金貸付の月額上限の拡大、また年収制限を撤廃し、希望する全ての人が対象となるよう取り組むべきと考える。見解を伺う。

【福祉保健局長】

保育士修学資金貸付制度についてであるが、都は、東京都社会福祉協議会を通じ、保育士を養成する施設の学生を対象に、所得制限を設けた上で修学資金の貸付けを行っている。

この貸付けでは、保育所等への就職を促すため、養成施設を卒業後、都内の保育所等に保育士として5年間勤務した場合、返還を免除している。

また、令和4年度入学の学生からは、入学後早期に修学資金を貸付けできるよう、入学前から申し込む機会を設けている。

保育士を目指す方を支援するため、今後、様々な工夫を凝らしながら、より多くの方が活用できるよう取り組んでいく。

④ 日本語教育の推進について

【質問】

令和3年度における都内公立中学校に在籍する日本語指導が必要な生徒は、日本国籍も含めると1,002名である。

都教育委員会では、在京外国人特別枠を有する各都立高校で学校説明会を開催しているが、一般募集枠と一緒になっての開催のため、日本語指導が必要な生徒へ十分な情報が届いていない。

そこで、都が実施する合同説明会で日本語指導が必要な生徒に対する相談ブースを設けるなど、NPO団体等のノウハウも活用した丁寧な対応をすべきと考えるが、見解を求める。

【教育長】

日本語指導が必要な生徒への都立高校入試に関する相談対応についてであるが、都立高校入試では、日本語指導が必要な多くの生徒が受検しており、これまで都教育委員会は、都立高校の入試案内パンフレットを複数の言語に翻訳し配布するなど、必要な情報提供を行ってきた。

今後は、こうした取り組みに加え、都立高校の合同説明会において、専門の相談窓口を設け、NPO団体等とも連携し、応募資格や入試における特別措置、在京外国人枠に関する相談等に対応していく。

また、あわせて、日本語指導が必要な生徒向けの都立高校入試に関する案内資料を新たに作成し、合同説明会等で配布するなど、きめ細かな情報提供を実施していく。

⑤ 学校部活動の地域移行について

【質問】

令和4年12月、国において、学校部活動および新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドラインが策定され、令和5年度からの3か年を改革推進期間として、地域連携、地域移行に取り組むとされている。

都としても令和5年度から地域移行に向けた取り組みを進めているが、都内各自治体が生徒、教員、保護者等の声を聞きながら、地域の実情に応じた取り組みを進めていけるよう、財政支援や指導者の確保に向けた支援を一層充実させていくべきと考える。見解を求める。

【教育長】

中学校における部活動の地域連携・地域移行だが、都教育委員会は、令和5年3月に策定した「推進計画」に、地域連携・地域移行に向けた区市町村への経費の補助や専門的な技術指導ができる指導者を確保するための方策を示している。

この計画に基づき、令和5年度から、区市町村に対して、財政支援を行っている。また、スポーツ・文化芸術の活動経験のある大学生や地域人材の確保に向け、東京学校支援機構TEPROの人材バンクへの登録について、複数の大学に依頼するとともに、リーフレットにより地域の関係者に周知している。

これらの取り組みを通して、区市町村の実態に応じた部活動の地域連携・地域移行の一層の推進を図っていく。

⑥ 東京都こども基本条例の普及啓発について

【質問】

東京都こども基本条例は、都議会公明党が原案を作成し、令和3年3月に全会一致で可決、成立した。

令和4年の予算特別委員会の締めくくり総括質疑で都議会公明党は、分かりやすく的確なメッセージを発信すべきと提案し、令和5年3月、子どもが主体となり、子どもの視点で内容や構成を検討した東京都こども基本条例ハンドブックが完成した。

東京都こども基本条例の理念を正しく伝え、子どもをはじめ、都民が正しく理解することが肝要である。ハンドブックを活用し、条例の理念を、新たな手法も取入れて発信すべきと考えるが、見解を伺う。

【子供政策連携室長】

こども基本条例の普及啓発についてであるが、子供をはじめ、広く都民に条例の理念を普及啓発するため、こども編集者が作成したハンドブックを児童館等の子供関連施設約7,000箇所に多言語版も含め配布するとともに、様々な媒体を活用した戦略的な広報を展開する。

また条例の内容を分かりやすく解説する短編動画を子供が企画段階から著名なクリエーターと共同で制作するプロジェクトを開始する。制作に当たっては、学識経験者等が参加する編集検討委員会の意見も取り入れていく。

さらに、海外の子供政策の先進都市との交流事業を立ち上げ、ワークショップに参加した子供がハンドブックも活用しながら条例の理念を自らの言葉で主体的に発信する機会を創出するなど、多面的な取り組みを展開していく。

⑦ 特別支援学校の職業教育について

【質問】

都立特別支援学校では、就業技術科や職能開発科を設置し、この10年間の平均就労率が94.8パーセントと、その成果は確実に現れている。

また、社会のデジタル化を見据え、パソコンを用いての業務報告書の作成やメールを活用した業務実習等も進めている。

生徒たちの卒業後の業務の幅を広げていくため、地域の作業所や企業等と連携し、全ての特別支援学校のデジタル分野での職業教育をさらに進めるべきと考えるが教育長の見解を求める。

【教育長】

特別支援学校のデジタル分野での職業教育であるが、都立特別支援学校高等部では、職業教育の一環として、生徒の障害の程度に応じ、文字入力や表計算などの基本的な技能を身に付けさせる指導を行っている。

また、近年、様々なソフト等の開発が進んでおり、障害の程度によらず、パソコンを活用した就労の機会が拡充していることから、各学校では、実用化されているソフトを使った実習など、生徒が企業で生かせるデジタルスキルの習得を目指している。

これらにより、一人ひとりの生徒が、学校で身に付けた技能を生かせる就労先で、生き生きと働き続けられるよう、全ての特別支援学校で、子供たちの可能性を広げる取り組みを行っていく。

防災対策

① 広域避難の実効性確保について

【質問】

都議会公明党は、都として広域避難先を確保すべきと求め、令和3年9月に1か所目となる国立オリンピックセンターが確保された。

今後も、早急に広域避難先の確保に努めるとともに、避難施設へ避難してもらえるよう、広域避難の実効性を確保する必要があると考えるが、知事の見解を伺う。

【知事】

広域避難についてであるが、東京の東部低地帯では、海抜ゼロメートルのエリアが広がり、大河川の氾濫や高潮等が発生した場合、広範囲に甚大な被害が想定され、大規模風水害への対策は急務である。

このため都は、都立施設の活用はもとより、大学等11団体と協定を締結するなど、広域避難先となる施設の確保に努めてきた。

今後、更なる施設の確保を図るとともに、広域避難時における情報発信について、行政やメディアなど各関係機関の役割や発信の内容・タイミング等をタイムラインとして整理するなど、迅速な避難に向けた対策を進めていく。

こうした取り組みにより、広域避難対策を着実に進め、都民の安全・安心を確保していく。

② 大規模水害時の道路高架部の活用について

【質問】

都議会公明党はこれまで、最後の砦として高速道路の高架部を利用できるよう提案し、避難者の安全対策の課題を1つ1つ解決し、ルール作りに取り組むべきと主張してきた。

そこで、高速道路高架部を安全に活用するためのルールづくりや、民間のバス等を活用し、避難者を安全な場所に誘導できるよう、地域の状況も踏まえた実効性のある避難の実現に向けて、都の役割や関与の仕方も含め、見解を伺う。

【都市整備局長】

大規模水害時の道路高架部の活用についてであるが、緊急安全確保先として一時的に利用できるよう、令和5年4月に、東部低地帯の5つの区などとの間で協定を締結した。御指摘を踏まえ、高架部の活用に当たっては、安全なルールづくりが極めて重要である。

本取組では、緊急安全確保の発令によっても、やむを得ず逃げ遅れ、高架部へ移動した住民の安全を確保するため、高速道路が緊急交通路として活用される前に高架部に待機したバスによって住民を浸水区域外に輸送する。

今後、本取組について、対象となる方々に適切な周知を行うとともに、高架部への誘導から輸送までのタイムラインを通して各区でも机上訓練を行い、都の係わり方も含め必要な事項を確認し、取り組みの実行性を高めていく。

③ 水害時の都営住宅の空き住戸の活用について

【質問】

都議会公明党は、水害時に地域住民の緊急避難先として、都営住宅等高層階の空き住戸を活用する協定を都が自治体と結ぶ施策を進めてきた。

かつてない豪雨による危険度が増している現在、協定を結ぶ自治体と避難用住戸数を更に増やしていくとともに、非常食や防災備蓄品を発災前に配置できるようにすべきと考えるが、都の見解を伺う。

【住宅政策本部長】

水害時の都営住宅の空き住戸の活用についてであるが、上層階の空き住戸を緊急避難先に活用することは、災害時の都民の安全・安心の確保に資するものである。

これまで、地元区市の要望に応じ、都は5区4市と協定を締結し、提供可能な戸数の確保に努めてきた。

令和5年度は更に、他の区市町に協定締結を積極的に働きかけていくとともに、空き住戸の情報を精査し、多くの住戸を提供できるよう取り組んでいく。

また、使用住戸が確定し次第、鍵の受渡しとともに緊急避難に必要な非常食等をあらかじめ配置できるよう地元区市町と協議をしながら更なる運用改善を図っていく。

④ 河川の水害対策の一層の推進について

【質問】

今回、善福寺川で溢水(いっすい)し、浸水被害が発生したことから、護岸整備に加え、調節池などのハード対策をより一層推進していくことが重要であると考える。また、河川監視カメラ等の設置拡大を進め、都民の皆様への情報発信などのソフト対策を速やかに強化していくべきと考える。併せて見解を求める。

【東京都技監】

河川の水害対策についてであるが、水害から都民の命と暮らしを守るためには、ハード、ソフト両面から効果的に対策を進めることが重要である。

ハード対策では、豪雨に大きな効果を発揮する調節池をこれまで27箇所で設置し、現在、8箇所で整備を行っている。さらに、約150万立米分の新たな調節池について、目標年度を前倒しして事業化を進めている。

ソフト対策では、河川監視カメラ映像を115箇所で公開しており、令和5年度24箇所を追加する。また今後予測水位に基づき氾濫危険情報をより早く発表する洪水予報河川の指定を拡大するとともに、溢水情報の速やかな公表など、迅速な避難につながる情報発信を充実する。

こうした取り組みにより豪雨に対する安全性を高めていく。

⑤ 在宅避難可能なマンション防災について

【質問】

発災後のトイレやエレベーターの使用に際し、使用可否の判断や復旧に向けた工事業者、メーカーとの連携強化などが課題である。

そこで、中高層マンションでの在宅避難を可能とするために、総務局、住宅政策本部を中心に、関係各局横断的な検討を進めるべきと考えるが、知事の見解を伺う。

【知事】

マンション防災についてであるが、都内では、約900万人がマンション等の共同住宅に居住していると推計され、都民の安全・安心を確保するためにも、マンション防災を強化することが喫緊の課題である。

マンションにおいては、災害時に在宅避難が可能なケースが想定されることや住民の方々が地域の一員としての共助を促進することなどが、災害対策上重要である。

こうしたことから、東京都地域防災計画震災編では新たにマンション防災を盛り込んだ。

マンション防災を推進するためには、トイレやエレベーターなど、マンション特有の構造上の課題への対応や、地域コミュニティと一体となった活動の推進、自助・共助の強化など、課題が多岐にわたっていることから、関係各局が連携し、具体的な施策の検討を進めていく。

こうした取り組みにより、ハード・ソフト両面から、万全の備えを講じていく。

⑥ マンション震災時のトイレ・エレベーター対策について

【質問】

マンション管理組合や賃貸マンションのオーナーなどが震災時のトイレやエレベーターの課題に積極的に取り組んでいけるよう、都として一歩踏み込んだ対応ガイドライン作成等、さらなる後押しをすべきと考えるが、都の見解を伺う。

【住宅政策本部長】

マンションの在宅避難の推進についてであるが、震災時に居住者が適切に行動できるよう、日頃からの備えが重要である。

都はこれまでマンション管理ガイドブックを通じて広くマンション管理組合へ防災対策の普及を図ってきた。

こうした取り組みに加え、令和5年度、マンション管理士を管理組合に派遣し、トイレ、エレベーター対応を含めた幅広い防災対策について助言を行う。さらに、分譲・賃貸を問わず、東京とどまるマンションへの登録促進により防災対策に優れたマンションの普及を図っていく。

今後、新たな被害想定を踏まえながら、関係局と連携して、マンションの防災対策を一層推進していく。

医療・福祉施策

① 地域の医療機能の偏在是正について

【質問】

東京都の場合、都心部に高度な医療ができる特定機能病院が集中し、区部の西側や多摩地域には慢性期の患者の病院が集中するという偏在がある。

東京における病院と医療機能の偏在を是正していくためにも、医師会や行政をはじめ地域の関係者で協議を行い、二次医療圏で真に不足する医療の提供が行われる仕組みに改めていくべきである。見解を伺う。

【福祉保健局長】

地域の医療機能の確保についてであるが、都は、医療法に基づき、二次保健医療圏ごとに基準病床数を算出し、その範囲内で病床を配分している。

医療機関が新規開設や増床を希望する場合には、行政や地域の医療関係者等からなる、二次保健医療圏ごとの地域医療構想調整会議において、医療機関が今後担う役割や機能について説明を求め、その内容を医療審議会に報告し、病床を配分している。

今後、医療審議会において専門家の意見も伺いながら地域に不足している医療機能を担う病床の配分に、よりつながるよう工夫するなど方策を検討していく。

② デジタル技術を活用した医療連携について

【質問】

現在、一部の医療機関が参加している「東京総合医療ネットワーク」の取り組みをはじめ、様々なネットワークに都内全域の病院が参画できるよう、都が支援を行っていくべきと考えるが、見解を伺う。

【福祉保健局長】

デジタル技術を活用した医療連携についてであるが、患者の広範な受療動向に応じ、都全域を対象とする広域的な医療ネットワークを構築するためには、デジタル技術を活用した医療連携に取り組む医療機関を拡大する必要がある。

このため都は、異なるベンダーの電子カルテの相互参照を可能とする、東京都医師会の東京総合医療ネットワークの取り組みを支援するほか、医療機関に対しては、ネットワークへの参画を条件として、電子カルテの導入や更新などの環境整備を支援している。

これに加え、今後、病院管理者等向けの研修でネットワークへの参画を働きかけるなど、医療機関相互の連携に向け取り組みを進めていく。

③ 看取りに係る体制構築と理解促進について

【質問】

都は、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の取り組みを区市町村等を通じ周知拡大を図るなど、広く都民に浸透させていくべき。また、自宅等での看取りについて、東京都医師会と連携して、医療・介護従事者と体制を構築するとともに、本人や家族への理解促進も図るべき。あわせて見解を伺う。

※ACP(アドバンス・ケア・プランニング)…人生の最終段階における医療およびケアについて、前もって患者さんを主体に、そのご家族や、医療・ケアチームが、繰り返し話し合いを行い、患者さんの意思決定を支援するプロセスのこと。

【福祉保健局長】

看取りに係る体制構築と理解促進についてであるが、住み慣れた地域でその人らしく暮らし、希望に沿った最期を迎えるためには、自らが望む医療やケアについて家族や医療・介護関係者等とあらかじめ話し合い共有する、アドバンス・ケア・プランニングが重要である。

都は、この取り組みを推進するための小冊子「わたしの思い手帳」を都民や医療機関等に幅広く配布しており、今後、地域の講演会や住民の集いの場で手帳を活用して話し合う取り組みなど好事例を区市町村間で共有していく。

また、東京都医師会と連携し、多職種連携のリーダーを育成することにより、看取り期の在宅療養患者を支える体制の構築を推進するとともに、区市町村による看取りの理解促進に向けた取り組みを支援していく。

④ 粒子線治療の早期導入について

【質問】

粒子線の1つである陽子線は、重粒子線に比べて、がん腫瘍周辺の正常組織への影響を抑えられるメリットがある。

陽子線治療を、がん診療の連携拠点病院である駒込病院や多摩総合医療センターなどに早期に導入すべき。

都立病院機構が行った「最先端がん治療に関する調査」の結果を踏まえ、都の粒子線治療施設の整備計画の策定に向けた取り組みについて、知事の見解を伺う。

【知事】

粒子線治療についてであるが、粒子線治療は、がん病巣への集中的な照射が可能であり、身体的な負担が少なく、仕事や学業、日常生活との両立も可能な治療法である。

都立病院機構が令和4年度行った調査では、対象となる患者は、都内で少なくとも年間1,000人が見込まれている一方、大型施設の整備が必要なことや他の医療機関と連携しやすい立地条件などの課題が挙げられている。

都は、令和5年度改定予定の、がん対策推進計画と合わせて、都立病院の粒子線治療施設の整備計画を策定する。

計画には、専門家の意見も踏まえ、最適な導入機器や具体的な整備地を盛り込んでいく。

都民の最先端がん治療の選択肢を広げられるようがん対策を推進していく。

⑤ ウィッグなどへの支援について

【質問】

都議会公明党はこれまで、がん治療に伴う脱毛や乳房切除など、外見の変化を補うアピアランスケアについて、都の具体的な支援の取り組みを求めてきた。

しかし、がん患者以外でも、病気等により外見の変化で苦しむ人の声は大変多く寄せられている。

がん以外のアピアランスケアを必要とする病気に対しても、ウィッグなどへの支援ができるよう対象の病気を拡充すべきと考えるが、今後の対応について都の見解を伺う。

【福祉保健局長】

ウィッグなどへの支援についてであるが、患者が治療を受けながら、その人らしく生活するためには、治療による外見の変化を補うアピアランスケアが重要である。

このため都は、令和5年度から、がん患者へのウィッグや人工乳房等の購入費用の助成に取り組む区市町村を包括補助により支援している。

今後、がん以外の病気を原因とする脱毛によりウィッグ等を使用する方について、実態の把握に努めていく。

⑥ 義眼を必要とする方への支援について

【質問】

義眼は、厚生労働省の推奨によれば耐用年数が2年であり、購入費は全額自己負担の場合、その都度15万円ほどかかり、大きな経済的負担になっている。

アピアランスケアの一環として義眼購入に対する助成制度を都として創設すべき。また、都は国に対し、眼球を温存して義眼を装着している方も保険適用の対象となるように改めていくことを求めるベきだが、併せて見解を伺う。

【福祉保健局長】

義眼を必要とする方への支援についてであるが、医療保険制度による治療用装具療養費の支給対象となるのは、眼球摘出後、眼球があった箇所を保護するために保険医が義眼の装着を治療上必要と認めた場合である。

また、障害者総合支援法による補装具費支給制度において支給対象となるのは、片目の視力を喪失し、他方の目の視力が0.6以下など認定基準に該当して身体障害者手帳の交付を受けた方等で、義眼が必要と判定された場合である。

都は、こうした制度の対象とはならないが、社会参加の観点等から義眼を使用する方について、今後、国の動向を注視しつつ、実態の把握に努めていく。

⑦ 1型糖尿病について

【質問】

1型糖尿病は、国の指定難病でなく経済的にも困難。また、緩徐進行1型糖尿病は、初期症状が似ているため、2型糖尿病と診断されいることも多く、医療従事者にも広く知られていない。

都は、1型糖尿病の難病指定を国に求めるとともに、早期発見や早期治療に向け医療従事者への情報提供、患者・家族への啓発を行うべきである。見解を伺う。

【福祉保健局長】

1型糖尿病についてであるが、1型糖尿病は、平成30年度に国の指定難病検討委員会において審議されたが、客観的な診断基準が確立していないことから指定難病に選定されず、それ以降、検討の対象となっていない。

都は、国に対し、1型糖尿病などの希少難治性疾患を幅広く検討範囲に含め、要件を満たすものは指定難病とするよう、提案要求しており、引き続き求めていく。

また、糖尿病医療連携協議会において、1型糖尿病の一層の理解促進に向け議論していくほか、二次保健医療圏ごとの検討会において、医療従事者に対する新たな研修や都民講座等の実施に向け検討していく。

⑧ 郵送方式によるシルバーパスの一斉更新について

【質問】

都は令和2年から令和4年まで、新型コロナ感染拡大防止のため補正予算を編成し、会場方式から郵送方式に切り替えて一斉更新を実施した。コロナは5類に移行したが、夏の更新時期の熱中症予防という観点やデジタル化の進展など、この間の社会環境の変化を踏まえ、以前の会場方式に戻すことなく、郵送方式も含め更新手続きについて検討すべきであるが、見解を伺う。

【福祉保健局長】

シルバーパスの一斉更新についてであるが、令和元年度までは、毎年9月に、都内各地に設置した会場でパスの一斉更新を実施してきたが、令和2年度からは、新型コロナ対策として、郵送方式で実施している。

令和4年度は、対象者約102万人に更新案内等を発送し、申請のあった約94万人分のパスを更新した。令和5年度は、郵送方式での実施に必要な経費を当初予算に計上しており、8月中に対象者に更新案内等を発送する予定である。

今後の一斉更新については、事業の実施主体である東京バス協会と連携し、様々な観点から、実施方法を検討していく。

⑨ ニーズの変化を見据えた都営住宅の間取りについて

【質問】

都営住宅の建替えに当たっては、居住実態を踏まえつつ、高齢者の生活の質の向上や孤立防止を図るとともに、子育て支援や居住者の多世代化に資する取り組みを急ぐべきと考えるが、見解を伺う。

【住宅政策本部長】

都営住宅の間取りについてであるが、高齢の居住者への対応や、子育て世帯など多様な世帯の入居希望に柔軟に対応できる住戸の供給が重要である。

現在、高齢居住者の介護者が滞在でき、小さな子どもがいる一人親世帯等も入居できる広さと2つの居室を備えるとともに、将来は隣接住戸と合わせてファミリー向け住戸に改修可能な新たな間取りの導入を検討している。

まずは、今後建替えに着手する足立区の辰沼町アパートで試行することとし、居住者の生活状況や新たな間取りへの入居希望を把握するため、アンケートを実施する。

こうした取り組みにより、居住者の介護ニーズや子育て支援などにも対応できる住戸の検討を進めていく。

産業施策

① 都政現場におけるスタートアップとの協働について

※スタートアップ…革新的なビジネスモデルによって、社会に変革をもたらす企業のこと

【質問】

都議会公明党は、都政現場でスタートアップの知恵やアイデアを生かしていくことの必要性を訴え、都は全庁にスタートアップとの協働の取り組みを広げるための体制を構築した。

都政現場において、課題解決のためにスタートアップとの協働を具体的に進めていくことが重要であり、都民へのサービス向上にもつながると考えるが、見解を伺う。

【知事】

都政現場における官民協働の推進についてであるが、スタートアップの革新的な技術や斬新なアイデアは都政の様々な現場の課題を解決し、都民サービスの飛躍的な向上に繋がる、大きな可能性を秘めている。

このため、都は、スタートアップが都政現場の最前線に入り込み、職員と協働して困りごとの解決を図る新たな取り組みを夏から開始する。各局に配置したスタートアップ担当が、例えば窓口対応などの様々な課題を積極的に掘り起こすとともに、スタートアップから解決に向けた具体的な提案を行う。

現場職員と対話を重ね、問題の所在や原因を見える化するとともに、AIロボットなどの優れた製品やサービスを導入し、窓口の改善等に繋げていく。

こうした取り組みを積み重ね、都政の津々浦々に官民協働の取り組みを浸透させていく。

② イノベーションを生み出す多摩地域での取り組みについて

【質問】

今ある施設を活用し、夢ある若者やその支援者が一堂に集う場を創ることは非常に有意義である。その観点から、こうした交流の取り組みを、例えば多くの大学が集積する八王子の「東京たま未来メッセ」など、多摩地域でも実施すべきであるが、見解を求める。

【スタートアップ・国際金融都市戦略室長】

イノベーションを生み出す多摩地域での取り組みであるが、多くの大学が集積する多摩地域では、起業家教育に力を入れる大学もある。こうした学生等の挑戦を後押しするためには、身近な場所で志を同じくする若者や支援者と交流できる環境を創っていくことが重要である。

このため、多摩地域の産業交流施設等を活用し、学生がスタートアップ等と交流するイベントや、アイデアを磨き上げる育成プログラムなどの取り組みを、民間の支援機関と連携して実施していく。

様々な主体との協働により、東京全体で夢やアイデアを持つ若者を応援していく。

③ 奨学金返還の負担軽減の対象要件の拡大について

【質問】

中小企業の人材確保のための奨学金の返還支援事業は、都議会公明党の提案により、人手不足の建設業やIT業、ものづくり企業に就職した学生等に、3年間にわたって最大で150万円の奨学金の返済を都と中小企業で支援する事業である。

中小企業の現場の実態を踏まえ、入社後に様々な現場に配置される技術者にも拡大し、さらには、卒業後3年を超えた人の採用も可能とするなど、要件を拡大すべきと考えるが、都の見解を伺う。

【産業労働局長】

奨学金返還の負担軽減による人材確保についてだが、中小の建設、IT、ものづくり分野の企業が、学生を将来の技術面の中核人材として採用し定着を図る上で、奨学金の返還の負担を減らす支援は効果的である。

都では、こうした分野の企業が、技術者として学生等を採用した場合、その奨学金返還を支援する事業を行いこれまで約50名の内定を実現している。

令和5年度は、学生の利用を増やすため、大学生向けの出張講座や説明会で事業を使うメリットを紹介する。

また、入社後に大学で学んだ専門的な知識や技術を生かして、一定の期間、生産や営業の仕事を行う方や、卒業後に転職をする20代の若手も対象に含める工夫を行い支援の効果を高めていく。

④ 中小企業の外国人材の確保について

【質問】

日本の技術を身につけて、母国で活躍する人材を育成する従来の技能実習制度では、来日する際に多額の借金を背負っている方がいる等の実態が指摘されてきた。

都内の中小企業を安心して外国人労働者に選んでもらえるよう、都がASEANなどの現地でも積極的にプロモーションを行うべきである。

東京都中小企業振興公社がタイのバンコクに設置した拠点なども生かしながら、都内中小企業の外国人材確保に向けた施策を積極的に紹介し、支援につなげていくべきであるが、都の見解を伺う。

【産業労働局長】

中小企業の外国人材の確保についてであるが、中小企業が働き手の確保を図る上で、外国人材を効果的に採用できるようサポートを行うことは重要である。

都は、東京で働くことを希望する外国の方に中小企業の職場の様子などを情報提供する窓口をアジア地域に設けている。また、東京に来訪して中小企業でインターンシップを経験する機会を提供するほか、会社説明会をオンラインによって実施している。令和5年度は、秋以降、こうした説明会をオンラインに加えて現地でも開催する。

これらの取り組みに併せ、今後、海外の方に、中小企業で外国人が活躍する様子を伝えるウェブサイトの充実を図るほか、中小企業振興公社のタイ事務所を通じ、東京での就職支援に関するPRの強化を進める。

⑤ 下水道におけるリン資源の肥料化の推進について

【質問】

東京では、多くの人々が生活しており、下水汚泥の発生量が多いことから、都議会公明党も、令和4年の公営企業会計決算特別委員会や公営企業委員会で都にその活用を促してきた。そこで、都における下水汚泥のリン資源化の取り組み状況について見解を求める。

【下水道局長】

下水汚泥のリン資源化の取り組み状況についてであるが、下水道局では、下水道が有する資源を最大限に活用していくことが重要であるとの認識のもと、下水汚泥中のリンについても、肥料への有効利用に向けて技術開発を推進している。

具体的には、国の制度を活用し、下水汚泥に含まれるリンを効率的に回収するため、民間企業と共同して新たな技術の開発を令和5年度から開始する。

さらに、リンの流通経路の確保に向けて、国や関係局、農業分野の関係者と連携し、成分分析や肥料需要の調査などを進めていく。

これらの取り組みにより、リンの資源化における低コスト化などの課題を解決しながら、肥料の国産化・安定供給に貢献していく。

⑥ LPガス販売事業者に対する支援について

【質問】

都議会公明党は、知事に対し、直接的な料金の負担軽減の対象となっていなかったLPガスについて、国の臨時交付金を活用して支援策を実施するよう要望し、この度の2定補正予算案に、1世帯あたり最大3,000円の使用料金を値引きする支援事業が盛り込まれた。

本事業は、LPガスの販売事業者を通じて支援を実施すると聞いているが、このような販売事業者は行政の手続きに不慣れな中小零細事業者が多いことから、都は、販売事業者に対する支援を充実させるとともに、本事業の活用を積極的に促していく必要があると考えるが、知事の見解を伺う。

【知事】

LPガス販売事業者に対する支援についてであるが、LPガスを利用する家庭等の負担軽減に向けた値引支援の円滑な実施には、販売事業者の理解と協力が重要である。

このため都は、7月から3ヶ月にわたる値引支援に当たり、事業者が負担する経費等を対象に支援金を給付する。

あわせて円滑な申請手続き等に対応できるよう総合相談窓口を新たに開設する。

また、説明会の開催等、事業者に対して、丁寧な周知等を行うとともに、都内にLPガスを供給する他県の事業者に向けて、近隣県と連携して、情報提供をし、支援につなげる。

今後、業界団体と連携しながら、事業者の協力を得て、LPガスの利用者に対する支援を着実に進めていく。

⑦ 宿泊税の見直しについて

【質問】

1泊15,000円以下の宿泊料金の100円の宿泊税を免除したほうが、深刻な影響を受けた宿泊業界を救うことになると考える。

1泊50,000円以上の高額な宿泊料金を支払う富裕層については、宿泊料金の3パーセントを課税するなどの定率課税方式を導入し、1泊15,000円以下の宿泊料金については、宿泊税を免除するなど、宿泊税を見直すべきと考えるが、知事の見解を伺う。

【知事】

宿泊税についてであるが、宿泊税は、都が課税自主権を行使して全国に先駆けて創設したものであり、東京が観光地としての魅力を一層向上させるための様々な施策の展開を支える安定的な財源として、重要な役割を果たしてきた。

創設から20年を迎え、宿泊税の重要性は変わらないものの、近年、外資系ホテル等の進出により高額な宿泊の増加が見られるなど、宿泊税を巡る状況は変化している。

こうした状況を踏まえ、今後、宿泊料金の動向等も十分に検証し、東京都税制調査会も活用しながら、宿泊税の見直しについて検討を深めていく。

見直しに当たっては、観光産業を巡る状況や、東京の観光振興の展開等を踏まえ、時期を適切に判断していく。

防犯・安全施策

① SNSに起因する少年・少女の非行・被害防止対策について

【質問】

SNS上での闇バイトの募集や、出会い系サイトを利用した未成年が性犯罪や薬物犯罪に巻き込まれる事件も後を絶たない。

警視庁としても、各種犯罪対策を講じているところであるが、「SNSに起因する少年の非行・被害防止対策」について、警視庁の見解を伺う。

【警視総監】

SNSに起因する少年・少女の非行や犯罪被害の防止対策についてであるが、昨今、少年・少女がSNSを介し、犯罪実行者募集情報、いわゆる闇バイトに応募して犯罪に加担したり、援助交際の誘引に応じて性被害に遭う事件が発生しており、警視庁ではハッシュタグBAN闇バイトと銘打った実行犯を生まないための対策や児童買春事犯等の被害防止対策を推進している。

具体的には、SNS上で、闇バイトの募集などの書き込みをした者への警告文の送信やサイト管理者へのこうした書き込みの削除要請、また、闇バイトなどの危険性について、補導活動時の指導や中高生・大学生に向けた防犯講話などで啓発している。

引き続き、SNS事業者等と連携し、SNSに起因する少年・少女の非行や犯罪被害の防止対策を推進していく。

② 防犯カメラの設置補助対象の拡大について

【質問】

都営住宅等の自治会やマンションの管理組合の経費だけでは、防犯カメラの設置が進まない状況があり、都の支援を望む声が高まっている。

地域住民が日常的に通行するなど公道に準じた使用の実態がある場合には、都営住宅等の敷地内通路への防犯カメラ設置についても、「地域における見守り活動支援事業」の補助対象とすべきと考える。見解を求める。

【生活文化スポーツ局生活安全担当局長】

防犯カメラの設置補助についてであるが、地域の防犯力向上に向け、都は、防犯のための見守り活動を継続的に行う地域団体が防犯カメラを設置する際に、費用の一部を区市町村を通じて補助している。

補助の対象は、不特定多数の人が通行する公道上における防犯対策を目的とするものであり、私有地や共同住宅の敷地内は対象としていない。

一方、都営住宅等の敷地内の通路には、不特定多数の通行を認めている事例があるため、個々の状況を丁寧に確認し、本事業の主旨等に合致する場合には、補助の対象とし、地域の防犯力向上に努めていく。

③ 課題の多い広告宣伝車の規制について

【質問】

繁華街では、巨大なトラックが派手な色使いや過度な発光を伴い、大音量で低速周回走行をしている。

東京都屋外広告物条例では、自動車の車体利用広告については、自動車登録された都道府県等の屋外広告物条例に従うことになっており、東京都で広告宣伝車を規制する条例があるにもかかわらず、都外ナンバーは規制対象外となっている。

他県との連携を進めながらも、早急に施行規則の変更に向けた手続きに着手すべきである。見解を求める。

【都市整備局長】

広告宣伝車に対する規制についてであるが、都内の繁華街を過度な発光などを伴い走行する広告宣伝車は都外ナンバーであり、良好な景観を損ない、交通事故を引き起こす懸念がある。

都では、東京都屋外広告物条例により、交通安全上の危険がある広告の表示を禁止し、また、デザイン審査を受けることを求めているが、こうした規制は、都内ナンバーの広告宣伝車にしか適用されない。

このため、都外ナンバーの広告宣伝車への都条例の適用について、早期に広告物審議会に諮問するとともに、許可権者である区との協議も開始するなど、年度内を目途に結論を出せるよう、検討を進めていく。

都政課題

① GovTech(ガブテック)東京について

【質問】

都は、行政と民間が協働して政策イノベーションを生み出す団体として、GovTech東京を7月に設立する予定である。

先般、理事長予定者として、宮坂副知事を決定したとのことである。選定理由に異論はないが、現職の副知事のまま、政策連携団体の理事長に就任することについて、都民にわかりやすく説明をする必要があると考えるが、見解を伺う。

【デジタルサービス局長】

GovTech東京についてであるが、理事長の選出は、法に基づき、設立時理事の互選により行った。GovTech東京の理事長は、グローバルな視座を持ち、革新的なサービスを生み出す手腕・実績を有するとともに、行政の仕組みを理解し、区市町村等と円滑な協働関係を構築できることが必要であり、今般、宮坂副知事が理事長予定者に選定された。

都としても、特に団体の立上げ期は、都と一体となった運営体制や区市町村と協働する枠組みの早期構築が求められることから、兼務することは適当と考えている。

兼務に当たっては、報酬を支払わない等運営の透明性や適切な経営管理など団体のガバナンスを適正に行い、都民への説明責任を果たすとともに、区市町村を含めた東京全体のDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進に取り組んでいく。

② パートナーシップ宣誓制度の運用拡大について

【質問】

パートナーシップ宣誓制度の利用者は、この5月末で746組となり、実施の効果が上がっている。

この制度は、パートナー関係の証明が難しいことから社会的に困難を抱えている性的マイノリティーの方々の人権擁護の取り組みだが、同じような状況に置かれ、支援を必要としているのが事実婚の方々である。

都は、事実婚の方々も本制度の対象に加えるべきと考えるが、見解を伺う。

【知事】

パートナーシップ宣誓制度についてであるが、ダイバーシティ東京を実現するためには、本制度の意義を広く社会に浸透させ、多様な性に関する都民理解を促進していくことが重要である。

都はこれまで、都内自治体や民間事業者等様々な主体に呼びかけを行い、受理証明書が活用可能なサービス提供を充実させるなど、制度の普及に取り組んでいる。

お話の事実婚については、その選択をする理由として夫婦の姓の問題があるとの指摘がなされていると聞いている。

選択的夫婦別姓については、その制度化は法改正が必要な事項であるが、国会において積極的な議論がなされるべきものと認識している。

③ デフリンピック大会を通じた共生社会の実現について

【質問】

2025年デフリンピック大会の開催に向け、聴覚障がい者の参画や理解促進など、共生社会実現につながるような気運醸成や芸術文化を活用した取り組みを進めていくべきと考えるが、都の見解を伺う。

【生活文化スポーツ局長】

大会を通じた共生社会の実現についてであるが、デフリンピックを契機に、共生社会への都民の理解を一層深めることができるよう様々な取り組みを進めていくことが重要である。

そのため、都は令和5年度、都民が共生社会を身近に感じられるよう、イラストを活用したホームページで、デフアスリートや聴覚障がい者の活動を発信する。また、子供を含めた幅広い世代が手話に親しめるよう、ダンスで手話を簡単に学べる動画等を制作し広く活用していく。

加えて、誰もが芸術文化の魅力に触れ、共生社会の実現につながる文化プログラムを今後検討していく。

これらの取り組みを通じて、聴覚障がい者への理解を深め誰もが相互に尊重しあえる社会の実現につなげていく。

④ 東京2020大会の不正事件について

【質問】

都議会公明党は、当初より組織委員会のガバナンスの様々な課題について指摘してきた。

談合事件は、会場運営をはじめとしたノウハウが組織委員会に不足しており、その運営が事実上、事業者に丸投げされてしまい、それが不正の温床になったと言わざるを得ない。

都も組織委員会に幹部職員を派遣しており、その責任は免れられない。今後、国際スポーツ大会において、都が必要な関与を行うために、談合事件を厳しく総括し、組織委員会のガバナンスについて課題を明確に分析すべき。

潮田副知事の答弁を求める。

【潮田副知事】

東京2020大会についてであるが、談合事件等の重大性と開催都市として組織委員会に職員を派遣していたことも踏まえ、調査チームを設置し、外部有識者が大会における課題の分析等を実施している。

有識者からは、監査室、法務部の設置など牽制機能に係る体制強化にも関わらず、結果的に事業の実施が優先されたことや、評議員会・理事会・監事、事業実施部門、コンプライアンス部門や内部監査部門の間の相互牽制による不正の発生防止機能が十分に機能しなかったとの認識が示されている。

会場運営等における事業者の活用では、知見の不足により事業者を適切に統制できなかったことや、受託企業の出向者による利益相反を防ぐ人材配置や利害関係者との接触ルールを定めていなかったことが指摘された。

こうした状況については都として、重く受け止め、今後の国際スポーツ大会等に有識者からの提言を生かしていく。

⑤ 世界陸上のガバナンス確保について

【質問】

2025年の世界陸上の開催に向けて、都が運営組織の設立後も引き続き関与していくならば、東京2020大会での運営手法とは明確に異なる一線を引くべきとし、①運営組織には、政治家や利益相反となる者を一切入れない、②民間との契約についても原則公開にする、③リスクアプローチの監査手法を導入する等、3条件を示した。

この3条件を踏まえた今後の取り組みについて、潮田副知事の答弁を求める。

【潮田副知事】

世界陸上のガバナンス確保についてであるが、国際スポーツ大会に関する有識者会議において、談合調査の外部有識者から、現時点での調査状況に基づく、具体的なガバナンス確保策などについて意見を頂くなど検討を進めてきた。

大会運営組織の取り組みとして、役員等は、競技や大会への知見、組織運営経験、政治的中立など、必要な資質を明確にした方針の下に外部有識者等による選考を行い、その理由や役割を公表する。また、専門人材の直接雇用等も活用して利益相反問題を防止するとともに、都の条例に準じた情報公開制度の導入や、不正の未然防止、早期発見のためのリスクアプローチ監査手法の導入を行う。

これらを通じて都民の信頼を得られるガバナンス体制を確保し、世界陸上大会運営組織の設立につなげていく。

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