5月8日、障がい者雇用支援と都市農業振興の観点から、障がい者が農業の担い手となる「農福連携」を広げようと、都議会公明党の橘正剛政務調査会長、のがみ純子、まつば多美子の各議員はこのほど、千葉市若葉区にある株式会社ファーマーズマーケットの農場を訪れ、ビニールハウスなどを視察した。
同農場は、独自の水耕栽培技術により障がい者が働きやすい職場環境を創出して提供するとともに、民間企業に障がい者雇用を前提とした農業への参入も促す試みとして注目を集めている。
約1000平方メートルの広々としたビニールハウス内に、無農薬で育てた小松菜やスイスチャードなど葉物野菜の鮮やかな緑が映える。
地面から90センチほどの高さに設けられた水耕パネルに向かい、知的障がいや精神障がいのあるスタッフたちが、出荷に向けて丁寧に収穫作業に当たっていた。
水と液体肥料で育成する水耕栽培には、土耕栽培に比べ、立ったままで収穫などの作業がしやすかったり、定植から収穫までの時間が早かったりという利点がある。主な農作業は、種まきや苗の移し替え、収穫、出荷。同社は独自の温度制御技術に加え、複数の区画で定植・育成・収穫を繰り返すことで毎日の出荷を実現している。
一方、この農場は、製造業やIT関連などの民間企業8社が雇用する障がい者を受け入れているのが特徴。一定割合の障がい者雇用が義務付けられている企業各社の雇用率達成を下支えする仕組みを採用している。
また、障がいの特性や程度に合わせて作業を立て分けて単純化し、障がいのある人たちが働きやすいように工夫。都議を複数のハウスや各作業所へ案内した同社の金地辰旺代表取締役は「離職率が高いとされる障がい者だが、健康上や家族の転居の理由を除き、離職したスタッフはいない」と述べた。
同社によると、採用から1年後の職場定着率は95%に上る。働く障がい者スタッフは約70人で、内訳は知的障がいが約6割、精神障がいが約3割、身体障がいは1割弱。同じ作業場で働いてもトラブルはないという。
安定した仕事量と高い生産性が注目され、今年2月には、技術指導を受けた障がい者が所属するIT企業が、障がい者雇用の拡大に向けて、自社ハウスによる水耕栽培に着手するなどの動きも出ている。
橘政調会長らは視察後、「スタッフの皆さんが生き生きと働いていると感じた。障がい者の就労支援の参考となる取り組みだ。障がい者が安定して働けて収入が得られるよう、都内の農地の維持・利用の観点を含め、農福連携を推進していきたい」と話していた。