伊藤こういち議員の予算特別委員会(3月8日)総括質疑

安全・安心

① 被害想定の見直しを行う意義と目的について

【質問】

知事は、昨年10月に、東日本大震災の教訓から策定した「東京都首都直下地震被害想定」を10年ぶりに見直すことを表明した。

そこで、この時期に首都直下地震等の被害想定の見直しを行う意義・目的について、都の見解を伺う。

【総務局長】

平成24年に策定した現在の被害想定は、東日本大震災を踏まえ、都の防災対策を早急に強化すべく、見直しを行ったものである。

それから10年が経過し、木造住宅密集地域の不燃化など、地震に強いまちづくりが着実に進展する一方、人口構造や世帯構成など社会環境が大きく変化している。

また、この間、熊本地震や大阪府北部地震など、全国各地で大規模な地震災害が頻発しており、これらを通じて、地震が建物に及ぼす影響などについて、最新の知見等が蓄積されている。

こうした状況を踏まえて、都の防災対策をより一層強化するため、今般、被害想定を見直すこととした。

② 被害想定の見直しにかかる情報発信について

【質問】

首都直下地震・被害想定の見直しに当たっては、水害リスク情報のように、地震による被害想定をデジタル化し、住宅の倒壊や火災延焼など、都民にわかりやすく見える化して情報発信を行うべきと考えるが、都の見解を伺う。

【総務局長】

新たな被害想定は、実効性ある防災対策に繋げることはもとより、都民の防災意識の向上に活かしていくことが重要である。

そのため、被害想定を踏まえて、地域防災計画を修正し、防災対策の実効性を一層高めていく。

また、新たに、東京都防災ホームページ等において、首都直下地震等で発生が想定される建物被害や液状化の状況などをデジタルマップ上に表示するとともに、東京都防災アプリからも確認できるようにする。

各地域の被害状況等を視覚的に分かりやすく示すことにより、都民の自発的な防災活動に繋げていく。

③ 防災分野でのデジタル技術の活用について

【質問】

都は、DX(デジタル・トランスフォーメーション)を活用して風水害の状況をこれまで以上にリアルに再現できる仕組みを構築して、都民に早期避難の重要性について理解を促すとともに、訓練等に活用するなど、災害対応力を強化すべきと考えるが、見解を求める。

【総務局長】

デジタル技術により、災害対応力を一層強化することが可能となり、都は様々な場面で活用している。

現在、水害の脅威を疑似体験できるVR動画を作成し、ユーチューブで配信している。また、来年度からは、アプリ版マイタイムラインの運用も開始し、より多くの都民に適切な避難行動を促していく。

さらに、新たに構築する、デジタルツインを活用した水害シミュレーションには、地形の高低差等のデータを基に、時間の経過による水位の変化を立体的に再現し、各地域の被害状況を視覚的に捉える機能を盛り込む。こうした機能を実践的な訓練で活用することで、発災時における都の対応をより現実に即したものに見直していく。

これらの取組を通じて、自助・共助・公助それぞれの災害対応力を更に高めていく。

④ 都市強靭化プロジェクトについて

【質問】

未来の東京戦略バージョンアップ2022では、「東京の危機克服都市強靭化10か年プロジェクト」に取り組むとしているが、最先端技術も活用し、先ずは次の10年に向けて、あらゆる災害から都民・国民の命を守るべき。都政の方向性と知事の決意を伺う。

【知事】

気候変動の影響により頻発化・激甚化する風水害、いつ起きてもおかしくない首都直下地震や火山噴火、未知の感染症やテロなど、様々な脅威に対処する「危機管理」は、都民が活躍するための大前提である。

困難の中で成し遂げた、東京2020大会のレガシーは、あらゆる備えを強化し、人を守る危機管理の重要性だ。

私はこうした強い思いの下、都民の命と財産、そして、この先の未来を生きる人々にまで思いを巡らせ「未来の東京」戦略のバージョンアップに、都市強靭化のプロジェクトを盛り込んだ。

プロジェクトでは、気象、地理など各種データや被害想定のシミュレーション等に基づく検証を行い、長期的な視点から、取るべき施策を明らかにする。

その際、AI、5Gなどのデジタルテクノロジーや最先端技術を活用した取組を幅広く取り入れていく。

危機管理の要諦は、広く大きく構えることである。

今後、全庁を挙げて検討を進め、災害の脅威から都民を守る強靭で持続可能な東京を創り上げていく。

⑤ スマートメータから得られるデータの活用について

【質問】

先行導入が本格化する来年度からプロジェクトの3か年において、スマートメータから得られるデータの活用や、見守りサービスに向けた事業者との連携を進めるべきと考えるが、見解を伺う。

【水道局長】

水道局では、令和4年4月からスマートメータの先行導入を本格的に開始し、10月からはスマートメータによる自動検針の運用を開始する。

これと同時に、各種手続や料金の支払い等が行えるスマートフォンアプリの利用開始を予定しており、スマートメータを設置したお客さまを対象に、異常な使用水量を検知した際に随時に通知する機能や、1時間ごとの使用水量を確認できる機能を搭載することとしている。これにより、漏水の早期発見や遠方の親族等による見守りに活用することが可能と考えている。

また、都庁各局や他のインフラ企業に加え、見守りサービス等を提供する事業者等との意見交換やニーズの把握を行い、スマートメータから得られるデータの活用に向けた連携を模索していく。

⑥ 配水小管スマートメータ設置の効果と導入の将来展開について

【質問】

配水小管スマートメータの設置により期待される震災・事故発生時の効果と、導入の将来展開について伺う。

【水道局長】

配水小管スマートメータは、配水管内の流量や水圧の変化を定期的に把握し、異常を検知した際には、直ちに監視端末へ通知する機能を有している。

これにより、震災や事故時の漏水を早期に検知し、断水や濁水の範囲を迅速に特定することが可能となり、復旧作業の効率化が期待できる。

今後、3年間のプロジェクトにおけるパイロットエリアでの効果の確認を行った上で、防災力向上に向けて配水小管スマートメータの活用方法や設置の在り方について検討していく。

環境対策

① 乳業メーカーや区市町村との連携について

【質問】

プラスチックストロー改革について、都は、品川区から都へ伝えられた母親たちの願いをどう受け止めてきたのか。またこれまで、乳業メーカーや区市町村とどのように連携して取組を進めてきたのか。見解を伺う。

【教育長】

学校給食のプラスチックストローの問題を解決することは、地球環境問題に対する取組や、児童・生徒への環境教育の観点からも重要であり、この点を憂慮した保護者の声は重く受け止めている。

都教育委員会は、都立学校の生徒による、コップに牛乳を移し替える取組や紙ストローの使用などの試行を経て、直飲みできるパックの検討を行うことにした。また、事業者に対しては、ストローレス容器の課題等に関するアンケート調査を実施したほか、意見交換や製造過程の視察を実施した。

また、将来のストローレスへの円滑な移行に向け、各区市町村に個別に出向き、課題の把握に努め、都立学校で試行した事例なども含めて理解を求めてきた。

② 事業者選定における環境への配慮について

【質問】

持続可能な社会の実現が求められている今、単に価格だけではなく、環境への配慮など、都が目指すべき方向性からも事業を総合的に評価・決定し、都内全域に学校給食におけるプラスチックストローの削減を波及させていくべきと考える。見解を伺う。

【教育長】

学校給食用牛乳は、国の学校給食用牛乳供給対策要領に基づき、都が複数の区域を設け、区域ごとに最低価格を提出した業者を選定している。

来年度、都内においては、この仕組みにより決まった8社のうち3社が、環境への配慮から、ストローを使わずに飲むことができる容器の導入を予定している。

なお、この容器は、児童・生徒の事情に配慮し、ストローの使用も可能な設計となっている。

今後、都教育委員会は、業界の動きが一層広がるよう、国に要領の改正を要望するとともに、価格競争の実施時に環境への配慮も併せて確認するなど、事業者に対し働き掛けていく。

③ 環境教育の推進について

【質問】

子供たちのアイデアが社会に届くように具体的な形にしていくのは、大人の役割である。そこで、子供のアイデアに着目した都の取組を伺うとともに、こうした環境教育を一層推進すべきと考えるが、見解を伺う。

【教育長】

都教育委員会は、今年度、身近な題材を基に地球環境を考える取組として、都立中高生を対象にプラスチックストローを使わない牛乳パックのデザインを募集した。14名から創意工夫を凝らした様々なデザインが寄せられ、現在、実用化の可能性のある作品について、東京都立産業技術研究センターとの連携により試作品を作製している。完成後、3月中に事業者に提案を行う予定であり、生徒にとっては、自らの考えが社会に繋がることを実感できる、貴重な体験となる。

今後、こうした取組を好事例として各学校に周知を行うなど、環境教育を推進し、子供たちが日常生活における環境問題に自ら気付き、行動できるための資質・能力を育成していく。

④ 子供たちの意見を都政に活かす仕組みについて

【質問】

地球環境などについて、子供たちの意見を聞き、都政に活かすべき。また、海ごみムービーのように、東京と海外の子供がインターネットを通じて地球環境やSDGsなどについて意見交換や交流する取組を発信すべき。知事の所見を伺う。

【知事】

私が以前参加した、環境問題を考える授業の中で、子供たちは熱心に議論し、意見を述べ合っていた。

このときに、私が出した宿題にも子供たちは真剣に答えてくれた。

「かけがえのない地球を守りたい」という意識は、私たちが思っている以上に子供たちが強く持っており、こうした思いや意見を活かしていくことが重要である。

都は来年度、子供の参加や対話を通じた政策を全庁を挙げて展開していくが、地球環境などの課題は、この国の未来を担う子供たちが具体的な取組に参画するにふさわしいテーマだ。

東京の子供たちが世界の子供たちとともに、地球規模の課題に目を向ける取組など創意工夫を凝らしながら、様々な分野で子供目線に立った政策を推し進めていく。

教育

① 多文化共生スクールサポーターの配置について

【質問】

都は今後、サポートセンターの機能を拡充・強化し、多文化共生スクールサポーター(コーディネーター)を必要とする全ての学校に配置できるよう支援していくべきと考えるが、都教育委員会の見解を伺う。

【教育長】

都立高校に在籍する外国につながる生徒について、日本語の学習や専門家による相談等、支援の体制を整えていくことは重要である。

都教育委員会は、日本語学習や在留資格の悩み等の相談に対し、NPO等と連携して、専門家である多文化共生スクールコーディネーターを派遣しており、在京外国人生徒向け入試を行う現在の4校から、来年度は8校全校に拡大する。

来年度から、専門家の派遣業務等を、NPO等の民間事業者が、サポートセンターとして事務局を担い、今後は相談に応じて、具体的な支援方法を計画していく。

② 外国につながる子供たちへの教育に向けた体制整備について

【質問】

外国につながる子供の教育と支援について、都は一本化した総合窓口となるポストを設置するなど、令和5年度の「特別の教育課程」導入を着実に進めていけるよう、体制を整備すべきだが、見解を求める。

【教育長】

外国につながる子供たちが安心して学校に通うためには、一人ひとりの状況に応じた支援が必要である。

都教育委員会は、区市町村教育委員会と連携し、学校への就学に向けた手引きや多言語化した就学案内を作成するとともに、NPO等民間事業者や法律の専門家等と連携し、児童・生徒や保護者からの相談対応を行っている。また、学校において、早期の日本語の習得に向けた学習機会を設けている。

来年度は、子供の状況に応じた日本語指導の授業を行うための特別の教育課程が令和5年度に高校で導入されることに伴い、教員用指導ハンドブックの開発や指導力向上に向けた研修を行うなどの準備を進める。

令和5年度の着実な導入に向け、関係局や区市町村等関係団体と連携を深めるとともに、体制を整備していく。

③ 外国につながる子供の支援について

【質問】

外国につながる子供と家族に日本にきて良かったと実感してもらえる国際都市東京として成長していくべき。困難な事を解決でき、安心の居場所があることが重要であり、各局の連携はもとより、様々な団体と連携していくことも必要であると考えるが、見解を伺う。

【生活文化局長】

外国につながる子供が抱える悩みは様々であり、学校の内外で多面的なサポートが必要である。

地域においては、外国人支援団体が運営する日本語教室などが、言語教育や学習支援だけでなく、交流の機会や相談対応なども行い、外国につながる子供の居場所となっている。

都は昨年度、東京都つながり創生財団を設立し、こうした外国人支援団体とのネットワークの形成を図るとともに、やさしい日本語を含む14言語で対応する「東京都多言語相談ナビ」を運営し、困りごとを抱える子供や家族を適切な窓口につなぐ取組を行っている。

今後、各局をはじめ多くの関係機関と連携を図り、外国につながる子供やその家族が安心して暮らせる環境を作っていく。

④ フリースクール等との連携について

【質問】

不登校の子供たちへの理解を図るため、学校、教員、保護者等が情報交換と連携ができるよう、フリースクール等との「協議会」を開催してきている。それらの成果を伺う。

【教育長】

都教育委員会は、昨年度、学校に通うことができない子供の気持ちを、支援に携わる大人が正しく理解するための冊子を作成し、都内全公立学校に配布・配信した。この冊子では、学校・家庭・関係機関が同じ視点で子供を支えることの重要性などを指摘しており、校長連絡会等で説明し、不登校は、取り巻く環境によってどの子にも起こり得ることの理解を促した。

また、昨年度から、教育委員会及び学校とフリースクール等との連携を強化するための協議会を年間3回開催し、効果的事例の共有などを通して相互理解を深めることができた。その結果、フリースクール等を利用した際の、出席の取扱いに関するガイドライン等を設定した地区が、2年間で22地区から27地区に増加するなど、連携が進展している。

⑤ フリースクール等に通う子供への支援について

【質問】

都教委の来年度予算案の新規事業の中には、「フリースクール等に通う不登校児童・生徒及びその保護者への必要な支援」として、1億円の予算が計上されている。そこで、具体的な取組や支援策、対象となる人数等について見解を求める。

【教育長】

都教育委員会は、一人ひとりに寄り添った多様な支援の充実に向けて、学校外の学びの場の1つであるフリースクール等に通う子供や、その保護者に必要な支援等を把握するため、来年度、約1億円の予算を計上した。

文部科学省の調査では、令和2年度に、都内公立小中学校の児童・生徒のうち、818人がフリースクール等で相談・指導を受けていることから、調査対象を1,000人程度と算定した。

今後、具体的な調査内容や調査に御協力いただける御家庭への協力金を含めた実施方法など、詳細について検討していく。

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